2020年よりプログラミングが新たに学校教育に取り入れられることはご存じでしょう。
次世代を担う子供達への新しい教育として注目すべきSTEAM教育というものがあります。
日本でもその取組は始まっていますが、STEAM教育という言葉。実は良く知らないという方も多いのではないのでしょうか?
今回はこれからの教育に関わってくるSTEAM教育について簡単にご紹介します。
目次
STEAM教育とは?言葉の意味と根源
まず新しい言葉について確認していきましょう。
STEAM教育とは、次の4つの言葉の頭文字を組み合わせてできた言葉です。
Science・・・科学
Technology・・・技術
Engineering・・・工学
Art・・・芸術
Mathematics・・・数学
アメリカのオバマ大統領の演説で使われた国家戦力としてのSTEM教育に芸術がプラスされたものです。理数系を強めることで科学分野で競争していける人材を担うため推進してきたアメリカで出てきた教育方針になります。
これまでのように出来上がっているものを使うだけではなく、新たな時代に必要なものを自ら作り上げていくためには、理数系・技術系が必要になります。さらには形にするクリエイティブ部分として芸術がプラスされています。
STEAM教育が注目されている理由とその背景
そもそも、なぜ、このSTEAM教育が注目されているのでしょうか?STEAM教育とは、結局、何のことなのでしょうか?
STEAM教育はもちろんのこと、プログラミング自体にもなじみの少ない親世代にとってはSTEAM教育の必要性がよくわからなくても当然でしょう。
まずはSTEAM教育が注目されている背景を考えてみましょう。
テクノロジーの急速な進化と発展
私達の生活は急速に発展しています。10年前・20年前と現代ではテクノロジー関連は飛躍的に進化してきました。スマホやタブレットの普及は、驚くほど生活を便利にして、子育てや仕事のスタイルまで大きな影響を与えています。
実際、昭和から平成を生きてきた親世代にとって、急速なまでの世の中の移り変わりはその目で見てきた通りです。電話やテレビなどの家電に始まり、携帯電話やポケットベル、パソコンやインターネットが急速に姿形を変え、今では1人1台スマホを持っていることが自然に思える時代。
そのおかげで私達が持ち歩く物も縮小し、本や時点、時計や電話など、用途ごとにあったアイテムも、スマホ1台で済むようになりました。
AIの時代への移り変わり
さらにこれからの時代はAIの時代。今の子供達の成長の背景には、日常的にAIを使いこなし、ロボットと共に生活をする風景に変わっていくでしょう。
親世代が見てきた世の中の変化とはまた違う形の変化を背負いながら、子供達はこれからの社会を作っていきます。
未来の人材育成
これからの時代は、AIやロボットを使いこなせる能力が必要になってきます。時代の波に合わせて新しい物を作り、時代の先を行く人材を育てていかなければなりません。
今まで通りの教育では、テクノロジーの発展スピードには追い付きません。世界的に考えてもこのような技術者は少なく、今後も不足すると予想されています。そのため、今から人材育成に活用できるSTEAM教育に注目が集まっているのですね。
STEAM教育はどのように導入されるのか
日本でもSTEAM教育の導入はすでに決まっており、動きだしています。その1つが2020年度から始まる小学校でのプログラミング教育です。
学校で導入
小学校での導入が決まっているプログラミング教育は、物事を論理的に考えていく思考を身に付けるとともに、問題解決や社会の変化に柔軟に対応できる力を身に付けるための取り組みです。
理科や算数・数学などで、実際のプログラミングと同じ方法で物事を考えていく内容が取り込まれていくことで、1つの物事を細分化し、目的達成のためにどう繰り返すのか、どう改善していくのか、どう組み替えていくのかなどの思考力が鍛えられると予想されています。
小学校では実際にパソコンを使ってプログラミングをするという授業内容ではなく、このような考え方を学習していきます。
その後の中学・高校で実際にプログラミングを組む際の導入部分にあたる基礎的な考え方を小学校のうちに学んでおくことで、理数系科目への苦手意識も少なくなるのではないでしょうか。
民間で導入
すでに民間のオンラインスクールでの受講やプログラミング教材の販売なども始まっています。もともと、民間では習い事の一環としてプログラミング教室やロボット教室があり、学校でプログラミングが導入されることで、近年、さらに活気を増してきています。
幼児期から学べるロボット教室は、実際に自分で作ったロボットを思い通りに動かせるとあって、小学校高学年にもなると本格的なロボットを作りあげていますし、プログラミング教室でも実際に子供達が簡単にゲームを作れるようになっています。
STEAM教育に注目が集まることで、さらに子供の習い事としてプログラミング教室やロボット教室にも注目が集まっています。
STEAM教育は今後どのように導入されていくのか
中学や高校でもSTEAM教育の導入は進んでおり、さらに今後においては大学などでも、学部や学科に関係なく、全ての学生がSTEAM教育にかかわる機会が作れるように、プログラムの見直しが検討されています。
理系以外の文系の人もSTEAM教育を受けることで、日本の技術者の底辺が増えることが期待されています。
STEAM教育の問題点や課題
教育の中で新しい取り組みが始まっている裏では、STEAM教育の問題点が浮き彫りになっています。
2020年度からはプログラミングが学校教育にも導入されますが、STEAM教育について現時点で上がっている問題点は3つあります。
①新たな教育を学校で教えられる教員の数が足りない
②教室に必要な設備がない学校などがある
③STEAM教育に使う教材が間に合っていない
新たな教育を学校で教えられる教員の数が足りない
あらたな教育が始まるにあたり、どの程度まで教員の研修ができるものなのでしょうか?プログラミング的思考についても、大人であればおそらく意図的に考えることは可能でしょう。
しかし、教育者として子供達に教えるとなると、難しい先生もいるのではないでしょうか。ただでさえ、先生という職業はキャリアや信念の違いによって差が出やすい職業。先生によっては、どのように教えていいのかわからないといった問題も出てくるのかもしれません。
外国語や専科の教師のように、専門の先生を頼むことも可能なのかもしれませんが、担任の先生との線引きが難しくなってきますね。すでにSTEAM教育を始めている海外の方法を参考にしながら、日本のSTEAM教育の問題も1つずつ解決されていくことでしょう。
教室に必要な設備がない学校などがある
海外の学校では、学校内のWi-Fiを自由に使用できたり、タブレットを授業で活用していたり、先生も生徒も自由に端末を使える環境になっているところもあります。
STEAM教育を進めるにあたり、日常的に端末を使っていくことでより実社会での活用とリンクして考えられるので、学校内の環境整備は必須の課題となってくるでしょう。
ネットワークのみならず、タブレットやパソコンなど、STEAM教育に必要な環境整備をどのように行っていくのか、国はどのように支援していくのか、手探りながらも早めに整えていく必要があるのではないでしょうか。
STEAM教育に使う教材が間に合っていない
STEAM教育と言っても、冒頭でご紹介しました5つの要素を組み合わせた新時代も教育内容です。何をどのように教育していくのか、それに伴った教材が揃っているわけではありません。
学校で使う教材などは、民間企業などと協力しながら進めているところではありますが、間に合っていないのが現状です。
早急な課題解決が必要になっている課題部分でもあります。
STEAM教育の導入は次世代を生きる子供達に必要な教育になるのか
STEAM教育を社会の取り組みとして学校に導入することで、AIやロボットと共に生きていくことが当たり前になる現代の子供達。
使いこなすのはもはや当然で、生みだしていく側になれる人材、問題解決をしていける人材などがどれだけ育っていくのか。実際問題、学校や民間の習い事での取り組みだけでSTEAM教育の実現ができるのでしょうか。
よくわからないから、パソコンもできないから、という人もいる親世代を横目に、STEAM教育を取り入れていくことで子供達世代。STEAM教育の導入で期待される人材を育てるために、できることから始めていきたいですね。
STEAM教育の背景を受けて親世代も変わっていく必要がある
子供の教育は学校や塾だけで行われるものではありませんね。一番小さな社会である家庭に始まり、周りで関わる人々、友達、自然と共に生きるために生み出されてきた数々の物。
そのすべては、毎日少しずつ見えないところで形を変えて進化し発展しています。世界規模で、これからの未来に向けて新たな教育方針に取り組もうとしているのであれば、家庭にも新たな教育という風が必要になるのかもしれません。
これまでの読み書き計算だけではない能力が、これからを生きる子供達に必要なのであれば、親は最低限、子供が学べる環境を揃えてあげたいですね。
子供達がSTEAM教育を受け続けていける環境を、親が家庭で、国や先生が学校で、民間企業が社会で、協力してそろえていく事が実現への第一歩ではないでしょうか。