いま、子供の習い事としてプログラミングが人気を集めています。しかし、プログラミング教室は他の習い事に比べると費用が高いこともあり不安な方も多いかとおもいます。
そこで今回は、現役子供向けプログラミング家庭教師が、「プログラミングを習い事にするメリットやデメリット、いつから始めるのが良いのか」などについてお伝えします。ITが苦手な親御さんでも分かるように丁寧にご説明します。ぜひ最後までお付き合いください。
目次
プログラミングの習い事では何を学ぶのか?
2020年より小学校でのプログラミング必修化が始まり、次いで中学、高校の授業でもプログラミングの導入が開始されました。2025年には大学共通テストで「情報」科目が追加されることも決まり、ITに対する社会の需要はますます高まっています。
(参考:文科省「大学共通テストの情報科目追加の資料」)
そんな中、習い事としてプログラミングを検討する子供さんも増えています。
子供向けのプログラミング教室では、小学生をメインターゲットにしている所が一番多く、対象学年としては小学3年生〜中学3年生が一番多いです。スクールによっても異なります。費用相場は月8000円〜月2万円程度、オンラインスクールだと月5000円〜月1万5000円程度です。
そもそも「プログラミング」というのは、やりたい目的によって学ぶことが変わります。「ゲームを作りたいのか」「webページを作りたいのか」「スマホアプリを作りたいのか」などによって取り組むプログラミング言語が異なります。例えば外国語でも、英語、スペイン語、フランス語、など場所によって使う言語は全然変わりますよね。それと一緒です。
そして、小学生で一番使われているのは「スクラッチ(Scratch)」です。これは正確に言うと、一般的なプログラミング言語ではなく、子供向けの学習教材になります。スクラッチを使って仕事をしているのは、私のような教育関係者のみです。将来エンジニアとして仕事をする際は何かしらのプログラミング言語を習得する必要があります。
ただスクラッチは非常に良くできた学習教材で、超初心者〜ハイレベル学習者まで対応できます。子供向けだからといって簡単かと言われれば全くそうではなく、大人でも難しい作品まで作れます。
本来「プログラミング」というのは、「何かを作る、生み出すためのもの」です。そこに本質があります。その意味では、スクラッチなどをやることで自分の頭で考え、生み出す体験が次々にできるため、本当に良い訓練になります。スクラッチをやっておくと、その後のプログラミング言語の勉強がしやすくなり、様々な能力を飛躍的に伸ばすトレーニングにもなります。将来IT系に進む子も、そうでない子にとっても役立つ一生物の力を伸ばせるでしょう。
プログラミング教室によってはスクラッチ以外の言語やコースもありますが、選ぶ際はこの「自分の頭で考えて、何かを作る、生み出す体験ができるかどうか」という観点で選ぶと良いです。それができるものは、プログラミングの素養を高めます。また、小学校高学年になると、本格的なプログラミング言語に取り組むことも可能なので、進める子は挑戦しても良いでしょう。
なお、学校教育でやる「プログラミング」や大学共通テストで追加される「情報」は、IT社会に関するもっと幅広く総合的な学習・知識です。習い事としてやる「プログラミング」とは少し意味合いが違いますので知っておくと良いでしょう。
プログラミングの習い事はいつから始めるのがベストなの?
子供の習い事としてプログラミングを検討する方も増えていますが、「いったい何歳から始めるのが良いのか?」と悩む親御さんも多いようです。
ここは人によって意見が別れる所ではありますが、筆者の経験では、ずばり「小学4年生ぐらいがベスト」だと考えています。プログラミング家庭教師として下は5歳から、上は高校生までを教えてきましたが、やはり年齢によってできることが大幅に変わってきます。
単純に「早ければ早いほど良い」というわけではなく、早すぎるが故にある程度のレベルまでしか学びを進められなかったり、自分の「やりたいやりたい」が勝ってしまい人の話をあまり聞けなかったりすることは良くあります。
レッスンはパソコンを使って行うので、調べているうちにyoutubeを見始めてやめられなくなる、なんてことも普通に起こることです。しかし、これらは決して幼いからダメなわけではなく、好奇心が強いことの裏返しで、成長過程の途中なので心配する必要はありません。
大体「自分のコントロールができるようになる、人の話を落ち着いて聞けるようになる、全体的な思考力が一定以上になってくる」のが小学4年生くらいです。もちろん個人差はあります。
ですので、プログラミングの習い事を始めるタイミングとしては小学4年生くらいがベスト、と一つの目安にすると良いでしょう。もちろん、中学生、高校生から始めるのも全く遅くはありません。むしろ中学生、高校生になってくるとハイレベルなプログラミングに取り組めるだけの頭ができてくる年齢なので、大人が仕事で使うのと同様のプログラミングを学ぶことができるようになります。
また、年齢が小学4年生よりずっと下の場合には、子供が強い興味を示しているのであれば始めるのも悪くないです。ただし、あくまで「遊びの延長で、能力を伸ばす」「プログラミング的な素養に触れる」ぐらいの感覚でいる方が良いかもしれません。スキルとして身につくことを期待すると可能性を潰す可能性も出てきます。「興味はあるのに人の話を聞けないから先に進めない」「才能はあるのに年齢的な限界で一定レベルで止まる」その結果としてプログラミングがつまらなくなる、プログラミングに飽きてしまうといったことは避けてほしいです。小学校低学年や幼児の場合には、きちんと難易度のレベルを合わせ、遊びの延長として楽しめるようなスクールを選ぶと良いでしょう。
プログラミングの習い事のメリット
次にプログラミングを習い事にするメリットとデメリットを簡単にまとめておきます。
メリット①能力を飛躍的に伸ばすトレーニングになる
プログラミングの学習を通して、将来IT系に進む子も、そうでない子にとっても将来役立つような力が身につきます。例えば下記のような能力を伸ばす訓練になります。
- のめり込むような高い集中力
- 目標までの道筋を論理的に考えるクセがつき、ロジックに強くなる
- できるまでひたすらトライ&エラーを繰り返す試行錯誤力、粘り強さ
- 自由に発想する想像力、自分でゼロから生み出す創造力
- 教えられるのではなく、自分で調べ自分で考えるくせがつく。学習能力そのものを高める
- パソコンや各ITツールを使うことに慣れる
もちろん取り組む学年やコースなどにもよります。ゴールデンエイジ期にあたる子供の脳は非常に吸収力が高いため、たった数回のレッスンでも少なからず効果はあります。長く続ければそれだけトレーニング効果も高くなります。ただし、あくまで子供がプログラミングを楽しんでやれている場合ですので、その点は注意が必要です。楽しめない状態でやらせてもあまり意味はありません。
メリット②将来使えるプログラムスキルが身に付く(条件付き)
プログラミングスキルは、そのまま仕事に直結させることも可能なため、将来エンジニアになることを視野に入れている子にとっては、早くから始めておくことは圧倒的な優位性になります。
ただし、ここで言うプログラミングスキルに「スクラッチ」は入りません。スクラッチは学習教材なので、スキルとして身につけたい子は本格的なプログラミング言語(=テキストプログラミング)にも挑戦すると良いでしょう。小学校高学年以上であれば勉強することは可能です。
その場合、取り組むプログラミング言語はまずはなんでも良いと思います。理由は、1つのプログラミング言語を習得すると他の言語も勉強しやすくなり横展開が効くからです。「ゲームを作りたい」「ホームページを作りたい」「ロボットを触りたい」など目的によって使う言語が異なるため、教室で教えているコースと言語の紹介を読み、子供が興味のありそうなものを選ぶと良いでしょう。
プログラミングの習い事のデメリット
デメリット①向き不向きは存在する
ここも意見が分かれるところだとは思いますが、私は正直に言って、スポーツに向き不向きがあるように、プログラミングにも向き不向きはあると思っています。論理的に考えるのが苦手な人や、プログラミング言語(=テキストプログラミング)に抵抗の強い人はいます。
もちろん向いていないからダメなわけではなく、個性は人それぞれ違うので他にもっと輝ける分野があるということです。ちなみに、大人向けのプログラミングスクールでも、入塾した生徒のうち必ず一定数は挫折して消えていくのが現実です。
向いている人は、「できるようになる」→「楽しいからまた取り組む」→「またできるようになる」という正のスパイラルが自然と回り始めます。苦手な人の場合、得意な人に比べると倍くらいの勉強時間を要します。その結果、楽しくなくなり勉強も進みにくくなることがあります。
初回体験などでは大抵の子が「楽しい」と言うのでこの判断は難しいでしょう。新しいことを覚えるのは誰しも嬉しいものだからです。「新しいことを覚えるから楽しい」なのか「プログラミング自体が楽しい」なのかは体験では判断しきれません。1・2ヶ月程度やってみた時点で向き不向きを判断してみると良いと思います。子供が楽しそうにやれていれば問題ありませんが、そうでない場合は子供と相談する必要があるかもしれません。ただし、向き不向きの問題以外にも「レベルが合っていないから」「指導スタイルが合っていないから」といった原因も考えられるので慎重な観察が必要です。
デメリット②環境を間違うと意味がない
どの習い事もそうですが、プログラミングの場合特に環境がその子に合っていないと、学習効果は極めて低くなります。
失敗例としてよくあるのは、「取り組むレベル(難易度)が合っていない」「指導スタイルが合っていない」です。
取り組むレベルというのは簡単すぎても、難しすぎてもよくありません。本人ができるかどうかギリギリの所、頑張ればなんとかできるラインというのが理想です。教室やコース選びの際には注意が必要ですが親御さんにはなかなか判断が難しいので、教室の先生とよく相談すると良いかと思います。
また、指導スタイルは主に「マンツーマンかグループレッスンか」「通学式かオンラインか」の二点です。他の受講生と交流しながらやりたい子はグループでやることで刺激を受けてより一層伸びていきます。一方で、指示に遅れて付いていけなくなり、恥ずかしくて質問もできない子などはグループでやると置いてけぼりになります。どのスタイルが一番集中できて、効率よく学習できるかはよく観察する必要があります。合わなかった場合は、切り替えることも選択肢に入れつつ習い事を始めるのが良いでしょう。
プログラミングが人気だからといって焦る必要はない
最後に1つだけお伝えしておきますが、「周りに合わせて自分の子もやらなきゃ!」と焦る必要はありません。
確かにプログラミング教室は全国的に増えており、年々通う子も増えていますが、実態としては習い事の中ではまだ少数派。人気ランキングに入る水泳、英語、ピアノ、サッカー、ダンス、習字などに比べるとやっている子はまだまだ少ないのが実態です。
おそらく5年後,10年後になるとプログラミングも上位ランキングに入ってくる可能性は十分ありますが、周りがやっているからという理由で始めるものでもありません。あくまで「自分の子だったら合いそう、楽しめそう」という感覚を大切にすると良いかなと思います。
今後、あらゆる産業においてIT要素が強くなっていくことは間違いありません。より一層IT人材は求められるようになります。プログラミング教室では将来的にも役に立つことが多く学べるため、子供を可能性を広げられれば良いですね。